【アレンジ解説】ベートーベンピアノソナタ月光第三楽章(by カメレ音楽隊)

楽譜

攻めのアカペラ

また斬新なアレンジを作ってしまいました。

カメレ音楽隊のテーマである、「攻めのアカペラ」にふさわしい曲となっております。

このアレンジについて解説していきます。

全体像

私がアレンジするときは、全体像を明確にしてから書き始めます。

この曲に関してはベートーベンが偉大過ぎてすばらしい曲だということに加えて、この曲をアカペラでやること自体に価値があるので、原曲からはあまり変えずに原曲のよさを最大に活かしたいなぁと考えました。

なので、あまりかっちり決めずに、書きながら考えて仕上げました。

FAN2017で歌うことにしたので、時間がなかったこともありますが。。。

ということで、全体構成だけ決めて、あとはひたすら音に落としていきました。

原曲

ベートーベンのピアノソナタということで、当然ピアノで演奏されている曲です。

知っている人は知っている曲ですが、ピアノになじみがない人は知らないかもしれません。ベートーベンの「月光」というと、第一楽章なら聴いたことがある方が多いでしょう。

第一楽章はこれです。聴いたことありますよね??

今回歌った月光第三楽章はこれです。

Kissinの表現は大好きなのですが、この曲に関してはこういうサラッといくのも好きですね。

ちなみにですが、ロックにしてしまうバージョンも見つけました。ギターうまい。

YouTubeで検索しましたが、アカペラでやっているのは私たちだけです。(第一楽章は合唱っぽくやっている動画みつけました)

第一人者!!世界初!!

コード確認

まずはコードをとっていきます。この曲はちょいちょい転調があるので注意します。

J-POPなら瞬時にコードはわかるのですが、クラシックはけっこう複雑なので、書き出さないとわからなかったりします。

こんな感じで書いて考えていきます。

ここで思いました、ベートーベンすげぇと。よくこんなの作れたな、と。本当にきれいです。

ということで、クラシックのアレンジはおすすめですよ。

曲の構成

こんな感じで曲が進んでいきます。さすがに6分越えは長すぎるので、不要なところをカットしていきます。

①Key:C♯m メインとなるフレーズ

②C♯mからG♯mへの鮮やかな転調

③Key:G♯m いろいろ起きる

途中でAになるところもあります。ここで転調したかのように見えますが、Ⅶ♭の和音がちょっと長く続いているだけで、転調ではないと私は解釈しています。

調がG♯mなので、メジャーならBがⅠ(スケールの始まりの音)になります。なのでその場合、いま出てきたAはⅦ♭にあたるので、一時的なコード変えるアクセントだと考えています。

④G♯mからC♯mに自然と戻る

G♯m→G♯→C♯mで転調をさらっとしていますね。

ここで最初に一回戻りますが、単純な繰り返しなのでそこはカット決定。

⑤Key:C♯m 主題がまたきたと思ったらC♯メジャー

からのF♯mへの転調です。この発想すごいよなぁ。

⑥Key:F♯mから、いろいろあってC♯mへ戻る

この辺の次々変わる展開はすばらしいですよね。

⑦Key:C♯m メインとなるフレーズ

⑧いろいろ起きるPart2

調はC#mのままでさっきのフレーズが出てきます。

このフレーズ、G#m、F#m、そして今回のC#mなので、3つの調で演奏されています。すごい。

⑨F♯mでメインフレーズからのディミニッシュ祭り

これまでC#mしかなかったのに、新たなバリエーションとしてF#mです。

そしてディミニッシュ。

GdimからのF#dim。半音のdim移動って珍しい気がします。

⑩ドラマチックゾーンでフィニッシュ

だんだん命名が適当になってきました。

一旦落ち着いてから、一気にドラマチックになります。

もう、常に張りつめている感じです。

どこをカットするのか?

①Key:C♯m メインとなるフレーズ

→残す

②C♯mからG♯mへの鮮やかな転調

→カット。いろいろ起きるinG#mは、F#mとC#mがあれば十分なので。

③Key:G♯m いろいろ起きる

→カット。

④G♯mからC♯mに自然と戻る

→カット。

⑤Key:C♯m 主題がまたきたと思ったらC♯メジャー

→残す。

⑥Key:F♯mから、いろいろあってC♯mへ戻る

→残す。

⑦Key:C♯m メインとなるフレーズ

→残す。

⑧いろいろ起きるPart2

→残す。

⑨F♯mでメインフレーズからのディミニッシュ祭り

→残す。

⑩ドラマチックゾーンでフィニッシュ

→残す。

こんな感じになりました。構成は決まりましたが、いろいろと問題が出てきます。

16分音符をどう表現するか問題

(1)音がとれない問題

この曲はひたすら16分音符が出てきますが、ピアノの音符をそのままにしてしまっては、絶対音外します。人間だもの。

アカペラの楽譜は、歌えてなんぼです。

最初の入りがこれです。音域的にも明らかに無理ですね。

極力音が上がっていく感じを出したい・・・。

でも、音が飛ぶと音を外してしまう・・・。

というジレンマ。

解決策としてはこちら。4つを1塊として音を上げていくことにしました。

初めの3塊は音量が出ていないこともあって、音程は上げないようにしています。

(2)スキャット言えない問題

当初は「ダバダバ」にしようと思っていました。

しかし自分で言ってみると、明らかに言えないのです。

いろんなスキャットを試してみたところ、一番しっくりきたのが、

ノゴノゴ

でした。なので採用。

次によかったのが「ナガナガ」でした。全体が「ナガナガ」だとうるさいので、mittyの見せ場だけで使用することにしました。

ここです。

フレーズ速すぎる問題

例①

ピアノって拍なしでやたら音符を入れるフレーズがあったりします。

例えば、これ。

これはロングトーンで2つの音程をつなげてだんだん変えるかたちで解決。

音源はここから。

例②

他には、ここ。

3連符で4拍→16分音符で4拍 →3連符で4拍→16分音符で4拍

→3連符で3拍+16分で1拍→16分で2拍+1拍を6分割したもの(?)で2拍

という、なんとも複雑で口ではマネできないフレーズとなっています。

解決策としては、3連符をベースにしつつ、息を吸えるように考慮して作っています。

「ダバダ」って実際に連続言ってみると、ダバダ7連続はさすがにきつかったので、交互に入れるなどの工夫をしました。4連続くらいはだいじょうぶだったので採用。

音源はここから。

最後に

こういう複雑な曲のアレンジでカギとなるのが、「いかにシンプルに組み立てるか」ということだと実感しました。

ぜひみなさんもクラシックのアレンジ挑戦してみてくださいね!

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