その楽譜、AIでも作れるじゃん?AI時代のアカペラ楽譜のあり方

楽譜

最近、AIとかIoTとか世間で騒がれていますね。

アカペラやっている人なら、特に楽譜を書いている人なら、「楽譜や作曲をAIが自動でやってくれれば楽なのになー」と考えている人も多いのではないでしょうか?

最近のAI動向

実は私も考えたので、いろいろと調べました。最近ではGoogleのTensorFlowというオープンソースのAIも出てきましたし、それを使った自動作曲プロジェクトMagentaというのもありますね。

こちらからどうぞ。英語ですが。こういう取り組みって夢があっていいですよね。
https://magenta.tensorflow.org/

技術的にはもうできるのだと思います。膨大なアカペラMIDIデータを集めてきて機械学習させて、アレンジしたいメインメロディや曲展開、メンバーの構成・音域などの変数を突っ込めばある程度のものはできるでしょう。具体的には、アカペラグループm-pactのMIDIを集めて、千本桜のメロディを書いてあげれば、m-pact風の千本桜ができるわけです。

AIでアカペラ楽譜を書く

ということで、さあ楽譜をAIで作ってみよう!といきたいところですが、その前にそもそも人工知能で実現する必要あるの?って話を書いていきたいと思います。

現時点での結論は、

アカペラ楽譜は人工知能で作らないほうが幸せ!

です。夢がないですね笑。

先日統計家の西内さんという方のセミナーに参加しました。ビジネスでAIをどう使うかって話でした。

統計学に詳しい方で、この本が有名です。私も数年前に読みましたが、わかりやすく書かれています。統計とかビックデータ、AIなどに興味があればぜひ読んでみてください。

統計学が最強の学問である(amazon)

 

今回のセミナーでは、近年AIが話題になっていることもあり、統計学と絡めつつ、ビジネスにおいてAIで実現すべきか判断する条件が5つ紹介されていました。

これをアカペラ楽譜に当てはめて、アカペラ楽譜をAIに置き換える価値について考えていきます。

AIで実現すべきか判断する5つの条件

①総負荷量

世界でどれだけの人がどれくらい困っていて、それがAIを使ってハッピーになるか、ということです。

アカペラ楽譜の場合だとこうなります。

・喜ぶ人:アカペラやってるorやりたいけど楽譜が書けなくてできない人。おそらく市場は大きくないです。

・喜ぶ内容:時間短縮、質の向上(これはちょっと疑問だけど)。

・結論:✕

②同質性

他にも応用しやすいか、特殊なパターンは多くないか、ということです。

一定のルールの中で行うものであればAIが扱いやすいです。例えば、近年話題のGoogleの囲碁AIは、囲碁というルールの中の話なので、AI予測がしやすいです。逆に人の寿命を予測するAIは、不健康な生活なのに長生きする人がいる、という例外が多すぎるので、予測が困難です。

例外が多いとAIの判断精度が下がってしまうので向かないということになります。

アカペラ楽譜はどうか。

楽譜を作る上ではある程度ルールがあります。音楽は数学のようなもので、きれいに聞こえるのはある程度規則があります。例えば、リードの3度上でハモったり、ラスサビで1拍ブレイク入れたり。逆に1度でぶつかる和音は不協和音なので使わない、など。

結論:〇

③制御性

単純で無意味な組み合わせパターンがどれだけ多いかです。例えば、工業製品で色違いの部品がたくさんあって、組み合わせ数が膨大にあるけれど、全パターン網羅できたところで新しい価値を生むものではない、というものです。

多すぎるとAIが適切な判断できないことがあるのでNGとなります。

アカペラ楽譜ではどうかと言うと、楽譜のパターンは型はある程度はあるけど、無数にあります。一見ダメなフレーズでもウケをとるためにあえてそのアレンジにするってこともありますし、何より型にハマったアレンジではつまらないですよね。スキャットもややこしいです。

ということで、

結論:✕

④責任性

失敗したときに誰がどう責任をとるのか?ということです。医療などではわかりやすいですが、例えばAIが最適な薬を処方したけれど、副作用で後遺症が残った場合などは、取り返しがつきませんね。

その点、アカペラ楽譜では、全く使い物にならない楽譜ができたところで、次トライすればよいので、問題になりません。

結論:〇

⑤感情性

人間がやるからこその価値なのかどうかです。最近ではAIで仕事が奪われてしまう!という声も聞こえますが、世の中には人間がやるからこそいいことはたくさん転がっています。

例えば、旅館に着いたときに女将が出迎えてくれることは、人がやるからいいのであって、ロボットが出てきて挨拶されてもおもてなし感は出ないわけです。もちろん技術の進歩でかなりリアルな人ロボットが作れるようになれば話は別かもしれませんが。

アカペラ楽譜の場合は、やりたいからやっている人が多いのではないでしょうか。

以前アカペラ楽譜は自己実現のためにやっているのだ!と書きました。

何のためにアレンジをするのか?
アカペラをやっている人なら100%遭遇するであろう問題、アレンジです。誰がやるの?ってバンド内で話になって、押し付けあうといったシーンもあるんじゃないでしょうか。みなさんは何のためにアレンジをしますか?私は自分を表現するためにやっています。

自分の触れてきた音楽を材料に、聴き手にどんな音楽を届けようかと考えに考えて、工夫するポイントを入れ込んで、楽譜を作ります。そしてその楽譜の出来がよかったり、期限に間に合ったりしたら、いろんな人にほめていただきます。やはりそれは人がアカペラの楽譜を作るからこそだと考えています。

また、アカペラの楽譜というのは書いて終わりではなく、実際に歌われることが大事です。つまり練習してどう表現するかをメンバーで議論して、一つの音楽として完成させることまで含めてアカペラです。そう考えると、AIが作った楽譜というのは「想いがない楽譜」であり、練習していくうえでも、「なんでこのフレーズにしたんだろう?」とメンバーが疑問に思っても、誰も答えてくれません。なので結局自分たちが歌いやすいようにある程度変更する必要が出てきます。それなら人が楽譜を書いたほうがいいじゃないかって話になるわけです。

結論:✕

参考サイト

今回行ったのはこのセミナーではないですが内容は似ています。
https://wisdom.nec.com/ja/technology/2017032701/02.html

まとめ

というわけで、もう結論は出ていますが一応まとめ。

①総負荷量:✕

②同質性:〇

③制御性:✕

④責任性:〇

⑤感情性:✕

総合的にみたら、✕(AIで作らない方がよい)でしょう。

アカペラ楽譜は人工知能で作らないほうが幸せ、と書きましたが、あくまで現時点の話です。人工知能は基本的に膨大なデータから未来を予測することに長けているので、独創的なものを一から作るというのは苦手です。しかし、技術の進歩でそれは何とかなるかもしれません。

そのときは人工知能で完全自動アレンジもいいですし、それが無理でも補助的に人工知能を使うのでもいいですね。例えば、プロのアカペラグループのコーラスワークを膨大に読み込ませておいて、変な和音になったらアラートを出すとか、は使えそうです。

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